著者名: | 澤 喜司郎 著 |
ISBN: | 978-4-425-92801-9 |
発行年月日: | 2013/11/11 |
サイズ/頁数: | A5判 276頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥3,080円(税込) |
乗り物から、日本の文化が見えてくる!?
さまざまな乗り物に見られる日本文化について概観。「神道」「アニメ文化」「官僚体制」などのテーマについて、豊富な写真と事例をもとに解説しました。日本交通文化論の入門書として最適の一冊です。
【まえがき】より
外国人から見た日本の不思議、外国人から見た日本の変わった習慣、外国人が日本に来て驚くこと、これらは文化の違いによるものです。日本人にとっては当たり前のことなので、日本人がそれを文化として認識することはほとんどなく、そのため外国人から見た日本の不思議や変わった習慣を聞くことによって私たち日本人は「日本や日本人」を知ることができます。
また、昔の日本人から見た現代の日本の不思議、昔の日本人から見た現代の日本の変わった習慣、これも文化の違いによるものです。つまり、文化とは一般に人間が学習によって社会から習得した生活の仕方の総称を言い、衣食住をはじめ技術、学問、道徳、宗教など物心両面にわたる生活形成の様式と内容を含むとされ、そのため社会が違えば文化は異なり、同じ社会であっても時代が違えば文化も異なります。
なお、外国人から見た日本の不思議や変わった習慣を聞くことによって私たち日本人は「日本や日本人」つまり日本の文化を知ることができ、昔の日本人から見た現代の日本の不思議や変わった習慣を理解することによって私たち現代の日本人は「昔の日本や日本人」つまり日本の昔の文化を知ることができます。そして、日本の乗り物を観察・追想することによって現代の日本の文化や日本の昔の文化を知ることができ、それは生活様式に大きな変化をもたらすものが技術で、その技術にも文化があり、生活の基盤としての乗り物、あるいは技術の集合体としての乗り物にも文化があるからです。
本書は、日本の乗り物から見た日本の文化について論述したもので、そのため表題は日本交通文化論という方が適切かもしれません。交通文化という語は一般的には使用されていませんが、本書では交通文化とは一般に人間が学習によって社会から習得した交通の仕方の総称を言い、具体的には人の移動や貨物の運送という交通の形成様式や内容を含むものと定義されています。つまり、本書は交通文化を通して日本の文化を断片的ながら横断的に解説しようと試みたものです。
文化には、目に見えない「隠れた文化」もあれば、目に見える文化もあり、また昔から伝わる伝統的な文化もあれば、新しく創造された文化もあり、日本には特に多くの文化があります。そのため、本書で取り扱う文化はかなり限定されたものになることから、まず各章の内容などについて簡単に紹介しておきます。
序章「日本の文化と乗り物」では、共生共存・融合の思想、「和」と思いやりについて概観し、文化の基層部に潜む「隠れた文化」とされる基層的文化としての宗教と信仰、自然崇拝と自然との共生、ハレとケ、顕在的文化としての企業と官僚、技術、観光旅行と伝承、新しい文化としてのマンガとキャラクターなどについて、その概念などが簡単に解説されています。
第1章「マンガ文化と乗り物」では、マンガとポップカルチャーについて概観し、マンガと乗り物の文化、マンガ文化とキャラクタービジネス、具象化されたマンガと乗り物について解説され、マンガの勧善懲悪性、子供たちの「ごっこ遊び」や変身ブームの延長線上のコスプレ文化、オタク、鉄道文化などについても言及しています。
第2章「宗教と信仰と乗り物」では、日本人の宗教と信仰について概観し、宗教と鉄道の生成、山岳仏教と参詣鋼策鉄道(ケーブル)、修験道と参詣索道(ロープウェイとリフト)について解説され、超越的なものに対する人間個人の態度つまり信仰に基づく活動としての初詣で、神道信仰と仏教信仰の神仏習合、日本人の信仰の喪失などについても言及しています。
第3章「自然との共生と乗り物」では、日本人の自然崇拝と自然との共生について概観し、自然と乗り物の融合、自然の探訪と日本人の道楽、自然を楽しむ乗り物思いやりについて解説され、日本人の自然好き、「お花見」「紅葉狩り」「雪見」など普段の生活の中での自然の楽しみ、若い人たちの「ながら族」的な「ながら文化」などについても言及しています。
第4章「日本の食文化と乗り物」では、日本人の食事と食文化について概観し、日本の駅弁文化と乗り物、楽しい食事と乗り物、新しい食文化と乗り物について解説され、車内販売やカフェテリア、食前の「いただきます」、食後の「ごちそうさまでした」の意味、アメリカ文化ノコカコーラ、弁当店と中食などについても言及しています。
第5章「キャラクター文化と乗り物」では、擬人化とキャラクター文化について概観し、日本の民話とキャラクター、日本の昔話と動物と乗り物、キャラクターと乗り物の融合について解説され、神話と皇祖神、妖怪、初夢によって吉凶を占う「初夢合わせ」。日本のクジラ文化、ご当地ヒーロー、郷土文化の創造などについても言及しています
第6章「遊びの文化と乗り物」では、日本人の遊びと遊びの文化について概観し、遊園地とマンガ文化の融合、非日常性の演出と遊園地の乗り物、伝統的な遊びと乗り物について解説され、遊びと日常、遊びの天才の日本人、遊園地文化、遊園地の非日常性と楽しさの演出、学びと遊びの共存、日本人の勤労観などについても言及しています。
第7章「伝統と伝承文化と乗り物」では、伝統と伝承文化について概観し、リバイバルブームともったいない精神、日本人の美意識とリバイバルブーム、伝承される乗り物と観光について解説され、「和」という日本の生活文化、モノを大切にする日本人の心、日本人の奥深さ、日本人のレトロ観などについても言及しています。
第8章「観光旅行文化と乗り物」では、日本人と観光旅行文化について概観し、観光旅行とちょっと贅沢な乗り物、自然の恵みとしての温泉と乗り物、観光と思いやりのある乗り物について解説され、団体旅行から家族・グループ旅行への変化、余所行きの文化、温泉好き、入浴の習慣と綺麗好きなどについても言及しています。
第9章「郷土文化と乗り物」では、郷土と郷土文化について概観し、郷土文化と乗り物の融合、郷土文化のキャラクター化、郷土文化の創造と乗り物について解説され、ゆるキャラ、風景のキャラクター化、マンガやアニメの広告手段としての利用、日本人の動物愛護の心などについても言及しています。
第10章「官僚文化と乗り物」では、規制と官僚文化について概観し、官僚の関与・介入と乗り物、官僚的な乗り物、官僚の許認可権と乗り物について解説され、日本人の鉄道好きと鉄道信仰、自転車タクシーなどについても言及しています。
第11章「企業の「和」文化と乗り物」では、日本の「和」と企業文化について概観し、JRの企業文化と経営理念、大手民鉄の企業文化と経営理念、地方中小民鉄の企業文化と企業風土について解説され、新幹線の経営課題、赤字ローカル線問題、コーポレートアイデンティティ、コーポレート・スローガン、大阪人の気質、通過儀礼、企業の社会的責任などについても言及しています。
第12章「技術文化と乗り物」では、技術の伝承と技術文化について概観し、最先端の技術と乗り物、高速化の技術と乗り物、環境にやさしい技術と乗り物について解説され、西洋人と日本人の自然に対する考え方の違い、日本人の安全安心思想などについても言及しています。
本書の構成と内容は以上のとおりですが、本書で取り上げて紹介できなかった日本の文化や乗り物も数多く残されているばかりか、紹介や解説が不十分な個所もあると思います。日本の乗り物から見た日本の文化について論述するという本書の狙いがどの程度まで成功しているかは、読者のみなさんのご批判を待たねばなりませんが、旧き良い日本の文化を考えて頂くときの参考になれば幸いです。
なお、本書で使用している写真はすべて著者が撮影したものです。撮影技術はいまひとつですが、文字による説明を補完するという役割は十分に果たしていると思います。ただし、写真については本文中で説明されていないものがありますが、テーマに沿った象徴的な写真を掲載していますので、参考にご覧いただければ幸いです。写真撮影に際して、いろいろと便宜を図って下さいました関係者のみなさまに御礼申し上げます。
最後に、「交通論おもしろゼミナール」の第10冊目として、本書の出版を快くお引き受け下さいました株式会社成山堂書店の小川典子社長、編集や校正で大変お世話になりました編集部の方々をはじめ、スタッフの方々に厚くお礼申し上げます。
2013年10月
著者記す
【目次】
序章 日本の文化と乗り物
1 日本人と日本の文化
2 自然と宗教の基層的文化
3 企業と技術と観光の顕在的文化
4 遊びとマンガの新しい文化
第1章 マンガ文化と乗り物
1-1 マンガとクールジャパン
1-2 マンガと乗り物の文化
1-3 マンガ文化とキャラクタービジネス<
1-4 具象化されたマンガと乗り物
第2章 宗教と信仰と乗り物
2-1 日本人の宗教と信仰
2-2 宗教と鉄道の生成
2-3 山岳仏教と参詣鋼索鉄道
2-4 修験道と参詣索道
第3章 自然との共生と乗り物
3-1 日本人の自然崇拝と自然との共生
3-2 自然と乗り物の融合
3-3 自然のたん探訪と日本人の道楽
3-4 自然を楽しむ乗り物と思いやり
第4章 日本の食文化と乗り物
4-1 日本人の食事と食文化
4-2 日本の駅弁文化と乗り物
4-3 楽しい食事と乗り物
4-4 新しい食文化と乗り物
第5章 キャラクター文化と乗り物
5-1 擬人化とキャラクター文化
5-2 日本の民話とキャラクター
5-3 日本の昔話と動物と乗り物
5-4 キャラクターと乗り物の融合
第6章 遊びの文化と乗り物
6-1 日本人の遊びと遊びの文化
6-2 遊園地とマンガ文化の融合
6-3 非日常性の演出と遊園地の乗り物
6-4 伝統的な遊びと乗り物
第7章 伝統と伝承文化と乗り物
7-1 伝統と伝承文化
7-2 リバイバルブームともったいない精神
7-3 日本人の美意識とリバイバルブーム
7-4 伝承される乗り物と観光
第8章 観光旅行文化と乗り物
8-1 日本人と観光旅行文化
8-2 観光旅行とちょっと贅沢な乗り物
8-3 自然の恵みの温泉と乗り物
8-4 観光と思いやりのある乗り物
第9章 郷土文化と乗り物
9-1 郷土と郷土文化
9-2 郷土文化と乗り物の融合
9-3 郷土文化のキャラクター化
9-4 郷土文化の創造と乗り物
第10章 官僚文化と乗り物
10-1 規制と官僚文化
10-2 官僚の関与・介入と乗り物
10-3 官僚文化的な乗り物
10-4 官僚の許認可権と乗り物
第11章 企業の「和」文化と乗り物
11-1 日本の「和」と企業文化
11-2 JRの企業文化と経営理念
11-3 大手民鉄の企業文化と経営理念
11-4 地方中小民鉄の企業文化と企業風土
第12章 技術文化と乗り物
12-1 技術の伝承と技術文化
12-2 最先端の技術と乗り物
12-3 高速化の技術と乗り物
12-4 環境に優しい技術と乗り物
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