島の博物事典


978-4-425-91151-6
著者名:加藤庸二 著
ISBN:978-4-425-91151-6
発行年月日:2015/6/17
サイズ/頁数:A5判 688頁
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価格¥5,500円(税込)
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日本の島々と、その歴史、文化、経済、動植物などについて約900項目を掲載したオールカラーの「島の事典」。

【はじめに】より 「島国」という言葉。子どものころからよく聞いてきたなじみ深い単語です。おとなになり、最近しみじみとその島国、というフレーズを意識して口ずさんでみたりします。「日本は島の国」と口に出して言ってみると、あ、そうかと気づくことはないでしょうか。そういえば地球上には島どころか海とは全然縁のない、国土全体が陸地に囲まれた国もあるのだということに気づき、あらためて日本は全部海にかこまれた島の国なのだと意識することと思います。
そうなのです、日本はユーラシア大陸の東の端にある小さな「島の国」。たしかに陸地は小さな面積なのですが、四方に点在する島々のおかげで、北から南西方向におよそ3,300kmの国土と領海が広がり、東京都心から南東の太平洋上約1,800kmに日本最東端の南鳥島、そして南南西方向約1,800kmの太平洋には日本最南端の沖ノ鳥島があるため、世界で8位という広大な海域面積をもつ国であるかということにあらためて気づき、その広大さに驚いてしまうかもしれません。
海上に頭を出している陸地には「島」という呼び名が付けられてきました。地球上にはいったいどれぐらいの数の島があるのでしょうか。数えてみたこともないのでわかりませんが、呼び名の付いた島々の中には人が住みはじめ、やがて経済活動がはじまり、そして文化がつくられていったのでしょう。そうした島が歩んだようすを想像しながら、史実などをひも解いてみるのは楽しいものです。また文字や人の所作として残されたものばかりでなく、自然というかたちで無言のまま残るものも島の大きな魅力です。
二十歳前後の夏に初めて島と出会いました。東京育ちの私は湘南江の島などに遠足で行ったことなどはありましたが、本格的な島への旅行というのはそのときが初めてでした。そのはじめての島は、鹿児島県奄美群島の最南端にある与論島でした。沖縄の本土復帰以前、昭和46年というのはこの鹿児島県の島こそ日本最南端だったのでした。
そこで初めて経験した南の島の強い印象はその後も脳裏から離れることなく、私の生活はそこから「島」を中心としたものになりました。学生という恵まれた時間を使い、与論島や沖縄の慶良間諸島などを中心に長期滞在し、海に潜り、漁師の生活を撮影して歩きました。
今にして思えば、45年間の私の島歩きの原点はこの2島にあるといっても大げさではありません。初めて接した与論島では、漠然とですが「シマ」というものに感覚的に触れたように思います。その居心地のよさ、自然の素晴らしさというものを知るきっかけとなったのです。そしてもうひとつの慶良間諸島。ここでは、島の生活や経済活動と人々のつながりという、コミュニティの根源的機能としての「ムラ」というものがあることを知りました。私の島への興味はこんなふうにごくありきたりの島の旅から、どんどん島の深奥部を求めて入り込んでいったものでした。
そんなわけですから当初から島を学問としてめざしたわけでもなく、島歩きをはじめた当初は島研究の先達である宮本常一や柳田國男の書物の大部分は読まずにいたほどでした。さすが長い年月のあいだにはそのうちの何冊かは読みましたが、それでも島について何か疑問が生じたときに認めるぐらいで、あくまで等身大で撮り歩き聞き歩く45年間でした。
さて、国内には430の有人の島々が点在しています。島歩きをはじめたころは南と北、そして太平洋や日本海側と歩いてみたものの、そこに見えてきたものは島という個々の「点」としてであり、それは端的にいってしまうと島々の違いと特色ばかりが目立つもので、≪継続して見続けていないとわからない島の文化≫や≪さまざまな島を連綿ととらえたあとでなければ視えてこないもの≫というものは見つけることができませんでした。
45年間という年月が与えてくれた御蔭というべきなのでしょう。島々を歩きまわったことで、薄々ながら日本の島を「点」としてではなく「平面」としてとらえられることが実感できるようになったのは島をめぐってきた者として喜ばしいことです。
どうしても島は島という個体としてとらえがちになるものです。しかし思えば東アジアにある日本という国の島々が、1島だけで他と関係性をもたないでいられるわけがありません。どの島もみな複雑な影響を受けたりおよぼしたりして存在しているはずです。そうした島々の関連と関係を点ではなく平面的にとらえ、ときに太古の時代から、また昨今の現象などを踏まえながら整理・分析したのがこの事典です。この本によって島への興味が湧くようなことがもしあったとしたら、筆者としてはこの上ない喜びです。

2015年5月
加藤庸二

【本書の読み方】  本書には、日本の島々とその歴史や文化、自然などについておよそ880項目が50音順に掲載されています。掲載されいる項目は、以下の11の分野に分類されています。
島と文化:島と人との関わりについて扱った項目【40項目】
歴史:島にまつわる歴史を扱った項目【22項目】
地理・自然:島の成り立ちや特有の自然環境を扱った項目【37項目】
交通:航路や島内での交通手段など島特有の交通について扱った項目【28項目】
政治・経済:離島振興法をはじめとした行政の方針や経済を扱った項目【16項目】
伝統・芸能:島特有の文化や芸能について扱った項目【33項目】
人物・学術:島に関わる人物を扱った項目【35項目】
民俗・伝説:古来の風習や習慣、言い伝えを扱った項目【44項目】
動植物:生息する植物や動物を扱った項目【38項目】
食:島ならではの食文化を扱った項目【40項目】
島:国内の有人島約440のほか、人工島や埋立島、湖中の島などについても掲載【573島】

【著者紹介】 加藤庸二 かとう ようじ
写真家。島のスペシャリスト。文化、伝統、食、自然、辺境地、人物などを取材し、雑誌、新聞などで発表するフォトエッセイストでもある。島との出会いは学生時代に旅した奄美の与論島と沖縄の慶良間諸島で、そこで潜水を学び水中撮影をはじめた後に陸上のフォトグラファーとなった。1980 年に創刊されたダイビング・グラフィック雑誌『ダイバー』の初代編集長を務め、のちにフリーランスとなり島々の取材活動をはじめた。国土交通省の「島の宝100 景」の選考委員のほか、日本旅客船協会、国土交通省のフォトコンテストの選考委員長などを務める。
日本写真家協会会員。東京都出身。

【おもな著書】
『沖縄35 島』(共著・桐原書店)『「島」へ。』(講談社)、
『日本の島』(成美堂出版)、『原色 日本島図鑑』(新星出版社)、
『原色 ニッポン《南の島》大図鑑』(CCC メディアハウス)、
『日本百名島の旅』(実業之日本社)、『絶対行きたい! 日本の島旅』(PHP 研究所)などがある。


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