駐車学 交通ブックス125


978-4-425-76241-5
著者名:高田邦道 著
ISBN:978-4-425-76241-5
発行年月日:2015/6/22
サイズ/頁数:四六判 188頁
在庫状況:品切れ
価格¥1,980円(税込)
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これまで「走行」の側面からばかり取り上げられてきた「自動車」問題。しかし、渋滞の原因はもとより、まちの盛衰をも左右するのが、駐車と駐車場の問題です。本書では「駐車」から日本の交通行政の課題を俯瞰、その考え方と具体的な解決策を豊富な実例をまじえて紹介します。

【まえがき】より  『交通をどう捉え、どう研究するのか。そしてどう活かすのか。』を問いながら半世紀の間、交通と関わってきた。当時から交通工学の多くの研究者は、「走行」をテーマにしていた。したがって、走行の実態を捉える調査法はかなり進んでいた。また、理論的にも水理学の流学の延長線上でとらえることもできたことも交通流の研究が進んだ背景でもある。走行の研究に対し、駐車の研究が遅れていた。その事由は、交通流の調査が定点観測できることでもあった。しかし、駐車の調査は調査員が移動しなければならず、また連続観測するためデータ量がとれなかった。また、駐車問題は、直接的に安全や渋滞の原因でもなかった。しかし、この不人気なテーマ『駐車』に著者は、長く関わることになった。 
それは、大学院の修士論文の指導を受けた谷藤正三師との出会いからである。駅前広場のバスの発着の最適化を卒業論文にしていたが、修士論文ではもう少し交通問題を大きく捉えたらということで、交通工学視点から「わが国のモータリゼーションの動向」を捉えなさいということでテーマをいただいた。当時(1966?1967年)、都道府県別に保有台数をみると、乗用車が貨物車を上回る県が少なく、上回る時点を予測し、その事由を分析した。工業生産額、所得があがると、舗装率が上がり乗用車が増える。同時に、地価も上がり、車の保有に駐車場の確保の負担が大きいこと。貨物車の多さは、流通構造が細くて、川下が強い流通構造であり、端末物流での駐車問題解決が必要なことなどが、おぼろげに分かってきた。そのような中、地下鉄東西線が開通し、当時の終着駅であった西船橋駅の周辺ある田圃の畦道にパークアンドライドの駐車が自然発生的に異常に増えたので、この調査をして発表したところ、総理府の大都市における交通施設の効率化利用に関する調査報告書(八十島義之助委員長)の作成に呼び出された。それが、1971年の光化学スモッグ問題の都心部に流入してくる自動車の制限手法として、都心部の路上駐車禁止が効果的であることの提案につながった。
 これらの駐車調査の経験を交通調査マニュアルの駐車調査にまとめた。その後、新谷洋二先生と出会いがあって、いくつかの駐車問題の計画づくりに調査担当者としてご一緒させていただいた。1980年代の後半からバブル経済への道を歩んだ都市の中心部はどこも路上駐車が氾濫した。この対策に駐車関連の法制度の改正が必要となり、新谷洋二委員長のもと幹事長ということで、お手伝いができ、多くの都県や区市に駐車の実態を見、計画づくりに参画できた。その後、この時取り残された短時間の路上駐車問題と大規模建築物の附置義務駐車の問題解決を研究テーマにし、また現場での社会実験を通して実現への道を求めた。その間、越正毅先生のアドバイスもあって、太田勝敏先生と三人の連名で路上駐車の取り締まりの必要性を「拝啓都知事様」に提出した。この成果か、「放置車両の確認作業の民間委託」が開始した。本書は、この間の議論を整理し、実行、遅延、中止などの経緯を記述した。その事由は、駐車問題はローカルな問題であるが、一方で都市の盛衰にかかわる問題なので、商店街の駐車計画、住宅地やマンションの自治会での駐車管理のための『駐車問題を議論し、対策を考える』種本になればと考えている。そして、道路管理者や交通管理者、あるいは地方自治体のまちづくり担当者や駐車対策担当者の実務に役立てていただきたい。できれば、議員の方々にも読んでいただきたい。そのため、技術書ではなく、新書版を目指して執筆したが、結果的にはその中間のところで、まとめることになった。
 昨今、地方創生が政府の政策の大きな柱になっている。その大きな柱は、「地方分権の確立としての住民参加」と「モータリゼーション化と駐車政策」と考えている。本書は、これにも役立つものと確信している。そのため、著者を必要とし、声をかけていただければ、出前講義や出前コンサルタントをすることにはやぶさかではない。
 なお、本書は以上述べたように交通工学の視点はもちろん、まちづくりや地区づくり、そして都市交通管理の視点からまとめてあるので、海外のあるいは古い事例でもその考え方やプロセスが役立ちそうなものは新旧関わりなく織り込んである。また、第3章の路上駐車については日本大学理工学部交通システム工学科の小早川悟教授の応援を仰いだことを記して、謝意を表す次第である。
最後に、出版計画から遅れること3年、辛抱強くお付き合いいただいた(株)成山堂書店の編集者に、心から謝意を表わす次第である。

2015年6月1日
千葉ニュータウン小室の自宅書斎にて
高田邦道

【目次】
第1章 駐車とは
 1.1 駐車の定義
 1.2 駐車政策の必要性
 1.3 駐車のモラルとルール
 1.4 道路管理・交通管理における駐車の位置づけ

第2章 わが国の駐車政策の仕組み  2.1 わが国の駐車政策の考え方
 2.2 昭和40年代以降の駐車対策
 2.3 バブル経済時の駐車政策
 2.4 ポストバブルの駐車政策
 2.5 これからの駐車政策
 (1)道路交通法の例外規定にある短時間駐車への対応
 (2)路外駐車場整備の遅れている地区・区間の路上での受け皿づくり
 (3)路外駐車場整備の過分の負担の是正
 (4)都市交通管理という視点からの駐車施策

第3章 路上駐車への対応策  3.1 わが国での路上駐車課題
 3.2 欧米の路上駐車政策との違い
 3.3 路上駐車の受け皿
 (1)路外駐車場の整備
 (2)公共駐車場
 (3)コインパーキング
 (4)ポケット・ローディング
 (5)ビルの桁高の確保
 (6)短時間駐車の路外駐車場への受け入れ運用
 3.4 路上駐車施設とその管理
 (1)ローディングベイ
 (2)ローディングゾーン
 3.5 路上駐車の取り締まり
 3.6 路上駐車対策としての端末物流対策

第4章 業務・商業地における駐車施策  4.1 業務・商業の駐車場整備の考え方
 4.2 都市交通管理における駐車の役割
 4.3 都心部の再生計画に果たした駐車場の役割
 4.4 業務・商業地における乗用車の駐車管理
 4.5 業務・商業地における貨物車の駐車管理
 (1)貨物車の附置義務駐車スペース
 (2)路上駐車施策と交通管理手法
 (3)駐車施策としての端末物流管理のシステム化
 4.6 業務・商業地における既存駐車場の活用方策
 4.7 業務・商業地における駐車計画とアセスメント

第5章 住宅地の駐車施策  5.1 住宅地の駐車問題と車庫法
 5.2 業務用自動車の持ち帰りによる路上駐車問題とその対策
 5.3 住宅地における時間貸駐車場
 5.4 住宅地の面的交通管理
 5.5 住宅地における路上駐車のための面的駐車管理(レジデンシャル・パーミット)
 5.6 車庫と景観
 5.7 郊外住宅地の最寄駅周辺の月極駐車場の有効利用

第6章 駐車施設の計画運用による新社会システムの構築  6.1 新社会システム構築のヒント
 (1)路上駐車
 (2)駐車場の付加価値化施設
 (3)米国TSMでの道路空間の再配分
 (4)パリのまちづくりの展開と道路下駐車場
 6.2 ポケット・ローディング・システム
 6.3 高速道路のポテンシャルを生かすSA/PA 駐車
 6.4 附置義務駐車スペースの減免
 (1)附置義務駐車スペースの減免の背景
 (2)附置義務駐車スペースの減免のための組織
 (3)新旧の附置義務駐車スペースの関係
 (4)附置義務駐車スペースの減免による申請建物・地域等のメリット
 6.5 地区附置義務制度

第7章 駐車政策の展望
 7.1 変わる車庫と駐車場のあり様
 7.2 車庫と前面道路
 7.3 路上駐車管理からみた法・制度改正の提案
 7.4 ゾーン30と駐車
 7.5 伝統ある繁華街の駐車スペース不足の解消策
 7.6 駐車政策の立ち位置


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