東海道新幹線運転室の安全管理 200のトラブル事例との対峙


978-4-425-96261-7
著者名:中村信雄 著
ISBN:978-4-425-96261-7
発行年月日:2016/3/24
サイズ/頁数:A5判 256頁
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価格¥2,640円(税込)
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本書は開業以来、未だ運転事故のない東海道新幹線の運転士たちが体験した様々な出来事を、原因別に集めたトラブル事例集です。
世界一安全と言われた新幹線を支えた運転士の活躍をお届けします。

【はじめに】より 私は幼児期から鉄道が大好きで、齢を重ねても思いは色褪せることはなく、さらに憧れは膨らんでいき、湘南電車の電車運転士に憧れ続けていた。1957年5月30日、ヤマハホールで開催された鉄道技術研究所50周年記念講演会「東京〜大阪3時間の可能性」を聞きに行ったのが新幹線との初めての出会いである。
戦後の残り香りがまだ微かに漂っている1958年4月1日、夢に見た憧れの国鉄に就職、国鉄時代、当時栄光の運転畑一筋に歩み、人間関係にも運にも恵まれた。1962年11月14日武蔵小金井電車区で電車運転士を拝命し、真新しい電車運転士の腕章、マスコンキー、懐中時計を手にした時の概念はひとしおであった。
1963年には夢に見た憧れの湘南電車の運転士になり、人生の当初の目的は達成された。新幹線構想が発表されると新幹線電車運転士に憧れ、挑戦し運良く試験に合格し、1965年2月に品川に開設された新幹線電車運転士科に入学を許された。3ヶ月の学科を終えて開業半年後に見習いとしてハンドルを握り、8月に正式に新幹線電車運転士兼機関士(ディーゼル)を拝命したが、当時は世界中の鉄道で例のない200km/hの定期高速運転列車は未知の体験が多く、想像を超える幾多の事例に遭遇した。馥郁たる文化の香り漂う東京運転所で、多くの尊敬すべき大先輩と共に働くことができることは喜びであり誇りでもあった。歳を重ねその史実を忘れないうちに記録に残さねばと思いつつ、時間だけがいたずらに過ぎた。国鉄時代の国労東京運転所分会には安川明の発案で、皆が日々の出来事を自由に書き、読むことができる「国労組合員連絡帳」が詰所に置かれていたが、それは多くの情報を共有できる正に「インターネット東京運転所国労分会版」であり、他に分会ニュースという謄写版刷りの新聞も貴重な情報源であった。
JRになり、やがて国労のそうした行動一切が禁止されたが、今泉秋雄の努力で貴重な資料は守られて廃棄を免れ、現在私の手元にある。そこに記された膨大な事柄をすべて書くのは不可能であるが、新幹線電車運転士として第一線で働いた者たちが日々記録した諸々の出来事の一部分を紹介、解説することにした。多くは他では知ることのできない新幹線運転現場の貴重な歴史の記録であると共に教訓である。
人生は自他の経験から学ぶこと、失敗から学ぶことはとても大切である。開業50年の時を過ぎ、今もって超高速運転ながら、人命が失われるような脱線転覆、衝突事故といった運転時このない記録を日々更新している。それは一朝一夕にできることではなく、試運転時代から一人ひとりが初めて出会う日々の事柄に真剣に対峙し、克服してきた知恵と努力の賜物である歴史の礎があるからである。ここの記述したことは、新幹線運転の歴史の記録として残すことはもとより、鉄道ファン、鉄道に思いを馳せる多くの方々も興味を持って頂けるのではと思い拙文を書いた。少しでもお楽しみいただき、当時の苦労や楽しさをご理解いただければ望外の喜びである。

平成28年3月
中村信雄

【目次】
序章 東海道新幹線営業開始
 夢の超特急新幹線

第1章 車両事故・トラブル  1.1 電気系統
 1.2 パンタグラフ関係
 1.3 台車・滑走・フラット関連
 1.4 ブレーキ系統
 1.5 ATC車上関連
 1.6 車体関連
 1.7 客室ドア関係
 1.8 車体関係・前頭アクリルカバー破損・ガラス割れ
 1.9 空調・室内・ビュッフェ関係
 1.10 便所・洗面所
 1.11 列車無線
 1.12 事業用車 電気試験車B編成・911・総合試験車(ドクターイエロー)
 1.13 信号・ATC地上関係

第2章 運転事故とアクシデント  2.1 運転事故
 2.2 車両火災
 2.3 運転阻害
 2.4 沿線火災
 2.5 列車妨害
 2.6 電力関係
 2.7 保線関係
 2.8 設備関係
 2.9 自然災害(雪・地震・雨など)

第3章 その他諸々の話題  3.1 客扱い関係
 3.2 人事労働問題
 3.3 様々な出来事
 3.4 珍談奇談
 3.5 国鉄末期からJR東海へ

在来線に関する記録  総武線で想定外の車両事故により前代未聞の停車駅通過事故が発生
 寝台特急火災 北陸隧道事故
 痛ましい感電事故
 電化区間の事故防止について
 ヨンサントウ前日に貨物列車鉄橋もろとも川へ
 富士川鉄橋が崩落
 「ヨンサントウ」1968年10月ダイヤ改正
 処女列車が故障
 駅の時刻表に明記されている電車が停まらない
 日本で最後の蒸気機関車牽引の定期列車が運転
 日本で最後の蒸気機関車の火が消えた


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カテゴリー:鉄道 タグ:新幹線 鉄道 
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