著者名: | 杉江 弘 著 |
ISBN: | 978-4-425-77792-1 |
発行年月日: | 2020/6/28 |
サイズ/頁数: | 四六判 200頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥2,200円(税込) |
空港内の出発時刻表示板を見ると、同時刻に数多くの便が飛び立つことがわかる。たとえば成田空港の午前10時00分には国際線10便以上が同時出発となっている。しかし、成田空港で離陸に使用される滑走路は1本が基本。複数の航空機が同時に離陸できるわけがない。このようなことは国際線、国内線を問わず大空港ではよくある話である。しかしなぜ、このようなダイヤが組まれるのか?
また、飛行機ダイヤと鉄道ダイヤの違いは何か? 飛行時間に影響を与える要因とは? そもそもダイヤはどのように作られるのかなど、「飛行機ダイヤ」についてまとめた本邦初の一冊。
【はじめに】より
「飛行機ダイヤ」とは一体どのようにして作成されているのか。
そして鉄道やバスなどのダイヤとの違いは何か。本書ではこれらの問いに答え、民間航空の運航はどのようなファクター(要因)によって成り立っているのかを解説していきたいと思っている。
問いの一つに答えるならば、鉄道のダイヤはいったん設定されたら必ず時刻通りに運行される性格を持っている。これに対し、民間航空では運航の三原則で、安全性、定時性、快適性を掲げていて定時性の確保は安全性の次に重要なポリシーにもかかわらず、出発時刻も到着時刻もそれはあくまでも「目安」でしかなく、パイロットもそれを正確に守って運航しようとしてもできるとは限らない。我が国のある大手の航空会社内ではタイムテーブル(時刻表)で定められた「到着時刻」に対し、20分以内の遅れなら定時到着とする社内のコンセンサスもあるくらいだ。
これまで鉄道のダイヤに関してはいわゆる「スジ」の引き方や時刻表の読み方は多くの出版物でも詳しく解説されてきた。しかし、「飛行機ダイヤ」に係る出版物はあまり見ることもなく、国内線と国際線のダイヤの違いやそれに与える要因などについて実際に運航の現場での経験も踏まえてまとめてみたのが本書である。
なお、今回の改訂版では3 章に航空会社内でのダイヤを作成する具体的な作業実態に関する一文を追加、5 章には羽田空港の新ルートについての記述を加えた。また、新設の7 章では「エアラインランキング」の指標とされる定時出発率と定時到着率の真相と各種エアラインランキングの信頼性について論評、コラム8では超音速機の復活計画について追加させていただいた。
2020年5月
杉江 弘
【目次】
第1章 鉄道やバスと大きく異なる飛行機ダイヤ
第2章 “運航”と“乗務”、2 種類のダイヤを使い分ける
第3章 飛行機ダイヤの作り方
(1)飛行機ダイヤは航空各社が独自に決定
(2)5 分刻みの日本や各国、分刻みのアメリカ
(3)ICAO とIATA、統一ルールを決める2 つの機関
(4)偏西風の影響で夏と冬2 つのダイヤを使用
(5)一度は目を通しておきたい運送約款
第4章 飛行機ダイヤを作るための約束事
(1)国際線に欠かせない相互での航空協定
(2)領空通過の承認と通過料の徴収
(3)空港のキャパシティが離着陸数を決める
(4)航空機の種類も考慮に入れる
(5)日本の国際線は国交省の認可が必要
第5章 飛行時間を左右するさまざまな要因
(1)ブロックタイムとフライトタイムとTAXI タイム
(2)航空交通管制からの承認と指示
(3)冬期の除雪、除氷作業
(4)航空機の発着枠
(5)悪天候による迂回や高度変更
(6)向かい風は追い風の2倍の影響を受ける
(7)長距離ほど影響を与える航空機の性能
(8)出発地と目的地の天候の対処法
(9)空港への進入経路と滑走路の方向
(10)想定外の事態
(11)羽田新ルートについて
第6章 飛行機ダイヤにみる路線ごとの特徴
(1)ヨーロッパ路線
(2)太平洋路線
(3)東南アジア路線
(4)インド・パキスタン路線
(5)オセアニア路線
第7章 定時運航とエアラインランキング
(1)どこからが出発時刻で、どこまでが到着時刻か
(2)ランキングにみる各社の出発率と到着率
付録 国内外のさまざまな時刻表
JAL 国際線時刻表(1964 年版)
JAL 貨物便時刻表(2008 年版)
JAL 国際線時刻表(2019~2020 年版)
JAL 国内線時刻表(2020 年版)
ANA 時刻表
キャセイパシフィック航空時刻表
ルフトハンザドイツ航空時刻表
チャイナエアライン時刻表
その他のさまざまな時刻表(日本)
その他のさまざまな時刻表(海外)
本書で使われている航空用語の解説
コラム
1 米国での同時多発テロ勃発時に飛行中の話
2 あと1 分で東日本大震災の中へ
3 EU が乗り入れ拒否を行う判断
4 ヨーロッパ線の乗務で体験したカルチャーショック
5 ETOPS 運航が生まれた経緯
6 向かい風によりウエーキ島で燃料補給していた時代
7 陸の孤島に近い硫黄島への緊急着陸(デルタ航空294 便)
8「 超音速の夢よ再び」は実現されるか?
■著者略歴
杉江 弘(すぎえ ひろし)
航空評論家、写真家。元日本航空機長。
1969 年、慶應義塾大学卒業後、日本航空入社。DC-8、ボーイング747(ジャンボジェット)、エンブラエル170 の機長として国内線とほとんどの国際線に乗務。
ボーイング747 の飛行時間では1 万4,000 時間という最長の記録を保持する。総飛行時間は2 万1,000 時間を超える。首相フライトなど政府要請による特別便の乗務経験も多い。
著書に『高度1 万メートルからの地球絶景』『マレーシア航空機はなぜ消えた』(以上、講談社)、『危ういハイテク機とLCC の真実』(扶桑社)、『ジャンボと飛んだ空の半世紀』『空のプロの仕事術』(以上、交通新聞社)、『プロフェッショナル・パイロット』『機長の絶景航路』(以上、イカロス出版)、『高度1 万メートルから届いた世界の夕景・夜景』(成山堂書店)、「747 ジャンボ物語」(JTB キャンブックス)などがある。
最近では、航空事故が発生するとテレビ局や新聞、週刊誌にて事故原因や再発防止について評論を行っている。写真家としては、これまでに多くの鉄道写真集を出版し、アサヒグラフ、毎日グラフ、セブンシーズなどでも世界の鉄道を紹介。
劇団四季に舞台用写真を提供するなども行っている。2004 年には「エプサイト」で写真展を開催、1 万人以上の観客数を記録する。日本エッセイストクラブ会員。
書籍「飛行機ダイヤのしくみ(改訂版) 交通ブックス310」を購入する
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