気象・地震と鉄道防災 気象ブックス044


978-4-425-55431-7
著者名:島村 誠 著
ISBN:978-4-425-55431-7
発行年月日:2018/7/18
サイズ/頁数:A5判 168頁
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価格¥2,200円(税込)
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日本は明治の初めに欧米から鉄道技術を取り入れたが、国土が狭く、厳しい自然条件の日本に鉄道を敷設するにはさまざまな制約があった。建設技術が未熟な時代につくられた線路・トンネル・鉄橋をいかしながら、少しでも安全性と利便性を高めるよう努力してきた鉄道会社の営みを、鉄道技術者の立場からまとめた内容。

【はじめに】 日本の鉄道技術は、自然条件が大きく異なる欧米から明治の初めに直輸入されて以来、南北に細長く急峻な地形のため様々な自然災害が頻繁に発生する国土のきびしい環境条件に適応する努力を絶え間なく続けながら発達してきた。
たとえば、黎明期には技術や資金の制約のためやむをえず災害を受けやすい場所に線路を通さなければならないことが多かったが、その後より安全な場所にルートを変更したり、貧弱な線路設備の取り替えや災害から線路を守る防護設備の設置など、いわゆるハード対策によって、少々の自然外力には耐えられるように設備が強化されている。また、まれにしか起こらない大きな外力に対しても、気象観測や情報技術を駆使したソフト対策によって、公共輸送機関としての自覚のもとに、安全を第一としながらも利用者に不便をかけないよう、鉄道各社はダイヤ乱れの防止に知恵を絞っている。その結果、日本の鉄道は世界に冠たる安全性と定時性を誇っている。
とは言いつつ、鉄道利用者は、台風や大雪、地震などのニュースに接するたびにまず列車ダイヤへの影響が心配になる。運悪くダイヤ乱れに遭遇して、「なぜ列車は『雨ニモ風ニモマケ』るのか? いったい鉄道会社はどうやって運休を決めているのか? もっとよいやり方はないのか?」とイライラした経験は誰にもあるはずだ。
気象、地震も鉄道も身近な話題であり、それぞれについてたくさんの解説書が出ている。しかし気象、地震と鉄道の関わりについて書かれた本となると意外に少ない。そこで本書では、主として鉄道実務技術者の立場から、鉄道における気象、地震への対応について解説した。
本書の概要を述べると、まず第1章では、様々な自然災害について、鉄道の安全を担うために必要な基礎知識と基本的考え方を整理した。また第2章では、直轄の専門技術者による土木構造物の維持管理体制を確立することで線路の防災強度を高めていった国鉄の業務近代化の過程を振り返った。また第3章では、安全の確保はもちろん、不必要な運休・遅延を回避するための重要な技術でもある災害時列車運転規制の基礎概念について述べ、これに続く第4章から第7章までの各章では、様々な災害事例やそれらを克服するための設備、技術やルールについて解説した。さらに第8章では、生きた樹木によるユニークな防災設備である鉄道林について紹介した。
鉄道という長い歴史をもつ交通機関が、気象や地震への対応という課題にどのように向き合い、事故や災害の教訓がどのように継承され、それらを踏まえて鉄道防災技術がどのように進化してきたのか、また、今後どのような方向に進もうとしているのか、などについて興味をお持ちの幅広い範囲の読者の皆さんにご一読いただけるならば幸いである。

2018年6月
島村 誠
【目次】
第1章 気象、地震の影響とその評価
 1.1 気象、地震と鉄道の関係
 1.2 災害および防災の定義
 1.3 誘因による災害の分類
 1.4 地形素因による分類
 1.5 物質移動及び施設被害の様式による分類
 1.6 災害因子による危険度のランク付け
 1.7 措置
 1.8 リスクアセスメント
 1.9 低頻度ハザードにどう備えるか

第2章 国鉄における防災業務の変遷  2.1 なぜ災害が多いか
 2.2 戦後の構造物の状況と業務体制
 2.3 構造物の実態調査
 2.4 業務近代化
 2.5 防災投資の進展
 2.6 構造物の健全度診断方法の標準化
 2.7 業務近代化と防災投資の成果

第3章 運転規制ルールの基礎概念  3.1 どのようなルールを定めているか
 3.2 災害時列車運転規制基準の構成要素と用語
 3.3 確率モデルによる運転規制ルールの定式化
 3.4 決定関数の優劣比較と改良手続き

第4章 雨と列車運行  4.1 雨による災害、運転支障のいろいろ
 4.2 降雨に対する初期の運転規制基準
 4.3 命を救ったルール
 4.4 長雨に対する運転規制基準
 4.5 六原事故とその対策
 4.6 連続雨量の問題点
 4.7 時間量・連続雨量から実効雨量への移行

第5章 地震と列車運行  5.1 構造物の耐震設計基準の変遷
 5.2 地震に対する初期の運転規制基準
 5.3 東海道新幹線の対震列車防護装置
 5.4 在来線への地震計の導入
 5.5 東北新幹線の早期地震検知システム
 5.6 ユレダスおよびコンパクトユレダス
 5.7 ガル値からSI値への移行
 5.8 既設構造物の耐震補強
 5.9 地震被害からの迅速な復旧
 5.10 新幹線の地震時脱線および逸脱防止

第6章 風と列車運行  6.1 風に対する初期の運転規制基準
 6.2 風速の測定方法および規制風速の制定
 6.3 強風時の運転規制基準の制定
 6.4 余部事故の発生
 6.5 余部事故技術調査委員会の調査結果を踏まえた対応
 6.6 横風に対する車両の空気力学特性に関する研究
 6.7 強風警報システムの開発・導入

第7章 鉄道の雪氷害とその対策  7.1 視程障害
 7.2 制動障害
 7.3 線路除雪
 7.4 分岐器除雪
 7.5 駅構内除雪
 7.6 吹きだまり
 7.7 なだれ
 7.8 凍上
 7.9 つらら・凍害
 7.10 着雪・着氷
 7.11 東海道新幹線における雪氷害と対策
 7.12 東北・上越新幹線以降の雪氷害対策

第8章 鉄道林:その機能と施業  8.1 鉄道林のはじまり
 8.2 初期の鉄道防雪林計画
 8.3 ふぶき防止林の構成様式と防雪機能
 8.4 ふぶき防止林の普及
 8.5 北海道北部における過湿泥炭地とのたたかい
 8.6 なだれ防止林の創設と発達
 8.7 なだれ防止林の構成様式と防雪機能
 8.8 様々な鉄道林
 8.9 鉄道林施業技術標準の制定


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