著者名: | 山口修司・一般財団法人 新日本検定協会 安全環境室・三井住友海上火災保険株式会社 海損部 共著 |
ISBN: | 978-4-425-34091-0 |
発行年月日: | 2018/8/28 |
サイズ/頁数: | A5判 240頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥3,850円(税込) |
危険物とは何かから、商法改正が危険物運送にどのように影響するのかまで、法律・実務・保険の専門家がそれぞれの立場からわかりやすく解説。
【はしがき】より
平成30(2018)年5月18日、「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」が国会を通過し、成立しました。商法のうち、運送及び海商に関する部分は、六法で唯一文語体の法律として残っていましたが、今回の改正で、口語体の法律となりました。
商法の運送及び海商の部分は、明治32(1899)年の制定以来改正もなされず100年以上が経過しています。
平成26(2014)年2月7日谷垣法務大臣(当時)が、法制審議会に商法改正の諮問を行い、同年4 月23 日に法制審議会商法(運送・海商関係)部会が構成され、改正の議論が始まりました。そして、2年に渡る議論を経て、平成28(2016)年2月12日に、法制審議会が法務大臣に商法改正の答申を行いま
した。
今回の商法改正の中で最も議論されたテーマが、「荷送人の運送人に対する危険物通知義務」の問題です。従来、商法には、運送に際し、荷送人が運送人に対し運送品に危険物が含まれることを通知する義務に関する規定はありませんでした。しかし、運送品に危険物が含まれていますと、運送に携わる人々の生命身体及び積み合わせ貨物に損害を発生させる可能性があるとともに、いったん事故が発生すれば、第三者にも甚大な損害を与えることも考えられます。そのような損害の発生や事故自体を未然に防ぐ必要性から、荷送人の危険物通知義務の規定が商法第572 条に新設されました。
しかし、ここでいう「危険物」とは法律上何を指すのか、また、既に存在する消防法や毒劇物取締法などの規制法ではどのような物が規制対象となっているのか、そしてその関係は、そして、事故に対する備えとしては何をするべきか、などの問題は、解決しなければなりません。
本書は、それらの問題点に少しでも解決の方向性を示すために企画されました。
本書は、執筆者が、各分野における専門家であり、必ずや危険物運送実務の画期的参考書となり、読者の皆様の期待に応えることができるものになると確信しています。
【執筆分担】
第1章「危険物と運送法制」
法制審議会商法(運送海商関係)部会元委員弁護士山口修司
第2章「荷送人に関係する規制内容と規制法令」
一般財団法人新日本検定協会 安全環境室
第3章「危険物運送と保険」
三井住友海上火災保険株式会社 海損部
堀池昌弘
小林一貴
太田雅浩
藤田尚志
石禾 徹生
長瀬泰彦
小幡毅
川合一郎
仲井 孝佑
田口雅一
※所属は執筆・編集当時
2018年7月
山口修司
【目次】
序章 本書で扱う危険物について
第1章 危険物と運送法制
1.荷送人の危険物通知義務の法制化
(1)法制審議会と商法(運送・海商)改正
(2)商法改正要綱
(3)改正商法の解説
2.危険物の運送について重要な法律の概説
(1)総論
(2)商法(運送・海商)
(3)国際海上物品運送法
(4)モントリオール条約
(5)約款の規定
1 標準貨物自動車運送約款
2 標準宅配便約款
3 標準内航利用運送約款
4 航空運送国内貨物運送約款
3.危険物運送責任に関する判例
(1)概観
(2)最高裁平成5 年3 月25 日判決(さらし粉事件)
1 事件の概要
2 東京高裁平成元年2 月6 日判決
3 最高裁平成5 年3 月25 日判決
4 判例の解説
(3)東京高裁平成25年2月28日判決(上告棄却確定)(NYK ARGUS対荷主事件)
1事件の概要
2 東京地裁平成22 年7 月27 日判決(第1 審判決)
3 東京高裁平成25 年2 月28 日判決(控訴審判決)
4 判例の解説
4.国際海上物品運送法と危険物
(1)国際海上物品運送法
(2)ヘーグ・ルールズと危険物
(3)英国における解釈
(4)米国における解釈
(5)世界の動向
(6)ロッテルダム・ルールズ
5.国内運送に関する危険物判例
(1)国内運送と危険物に関する荷送人の責任
(2 )東京地裁平成27 年11 月26 日判決(運送中コンテナ内貨物が爆発した事件)
1 事案
2 判決内容
3 解説
(3)東京地裁平成28 年7 月14 日判決(タンクローリー横転炎上事件)
1 事案の概要
2 判決内容
3 解説
6.危険物製造者の責任
(1)概観
(2 )東京高裁平成26 年10 月29 日判決(上告棄却決定)(NYK ARGUS対製造物責任事件)
1 事件の概要
2 東京地裁平成25 年5 月27 日判決
(NYK ARGUS 製造物責任事件第1 審判決)
3 東京高裁平成26 年10 月29 日判決
(NYK ARGUS 製造物責任事件控訴審判決)
4 製造業者の製造物責任の解説
7.危険物にかかわる当事者の責任のまとめ
(1)荷送人
1 国内運送の荷送人
2 国際海上物品運送の場合の荷送人
3 失火責任法
(2)製造業者
(3)運送業者
第2章 荷送人に関係する規制内容と規制法令
1.危険物とは何か
2.海上運送のケース
(1)海上運送上の危険物
(2)運送禁止危険物でないか、運送可能か
(3)危険物の品名・国連番号の決定
(4)個品運送か、ばら積運送か
(5)容器、包装及びオーバーパック
(6)危険物の容器への収納方法
(7)危険物を収納する容器への標札、品名等の表示
(8)コンテナによる危険物の運送
1 コンテナの要件
2 コンテナの種類
3 コンテナの構造等
4 コンテナの検査及び保守点検
(9)危険物のコンテナへの収納方法
1 危規則及び危告示で定める収納方法
2 IMDG コードで定める収納方法
(10)危険物の隔離
1 危告示別表第1 隔離の欄で定める隔離要件
2 危告示別表第14 で定める隔離要件
3 危告示別表第14 の2 で定める隔離要件
4 危告示別表第15 及び別表第16 で定める隔離要件
(11)コンテナへの表示
(12)積付検査
(13)収納検査
(14)危険物の量が微少の場合
1 少量危険物
2 微量危険物
(15)特別措置
(16)書類の供与等
(17)コンテナの船積み前の確認等
3.陸上運送のケース
(1)消防法における危険物
(2)運搬
1 運搬容器
2 積載方法
(3)移送での規制
1 移動タンク貯蔵所の設備、構造の基準 151
2 移動タンク貯蔵所の貯蔵基準 152
3 移動タンク貯蔵所の取扱時の遵守事項 152
(4)イエローカード
4. 危険物運送のQ&A
Q1 関連規則等の関係
Q2 関連規則等の改正スケジュール
Q3 SDS 及びGHS ラベル
Q4 容器検査(性能試験)の試験方法
Q5 V マーク付容器・サルベージ容器
Q6 標札等の表示の方法
Q7 コンテナ内の貨物の移動・荷崩れ等の事例
Q8 コンテナ等への固縛時に想定すべき力の大きさ
Q9 コンテナ内の荷重分布(偏荷重)へ配慮すべきこと
Q10 海洋汚染物質の個品運送に関する基準について
Q11 北米で鉄道運送を利用するコンテナへの標識の表示箇所
Q12 海外での検査(コンテナインスペクションプログラム)の概要
第3章 危険物運送と貨物保険
1.危険物の運送と保険
■貨物保険者から見た「危険物」とは
2.危険物の運送中・保管中におけるリスク、事故
(1)危険物そのものに対するリスク
1 危険物の性質に起因するリスク
2 一般的な運送中のリスク
(2)第三者に対する賠償リスク
1 荷送人の通知義務
2 荷送人の通知義務違反と事故
3 事故発生時の荷送人としての責任法理
4 損害賠償の相手
5 危険物運送と荷送人の責任にかかる代表手な判例
6( 参考)危険物運送と運送人の責任
【コラム】天津爆発事故
3.危険物の運送に関連する保険と補償の対象となるリスク
(1)国内物流(内航、運送)に関する貨物保険
1 商品の種類
2( 基本的な)補償の対象となる損害、ならない損害
(2)国際物流に関する貨物保険
1 商品の種類
2 外航貨物保険の概要
【コラム】製造物責任と生産物賠償責任保険について 207
(3)危険品輸送賠償責任保険について
1 危険品輸送賠償責任保険の特長
2 危険品輸送賠償責任保険の概要
3対象となる事故(損害賠償請求ベース)
4 支払限度額
5 免責金額(自己負担額)
(4)危険物の運送と船舶保険
1 船舶保険者から見た「危険物」とは
2 船舶保険の主な種類
4.事故防止のための対策について
(1)適切な貨物の申告
(2)適切な運送ルートの選定
(3)適切な荷姿・梱包・積付け
【コラム】 大規模災害における復旧のポイント
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