著者名: | 鈴木勝雄 著 |
ISBN: | 978-4-425-71571-8 |
発行年月日: | 2018/10/18 |
サイズ/頁数: | B5判 400頁 |
在庫状況: | 在庫有り |
価格 | ¥5,280円(税込) |
重力の作用によって、水面に生ずる重力波―水波。
この水波の中に、静止したり、揺れ動いたり、進行したりする物体があるときに、その物体の周りに波がどのように生じ、変形するのか。物体には、どのような力が働き、どのように揺れるのか。
コンピューターの発展により、純数値計算が容易になった現在、あらためて古典的な計算方法を用いた解法を学び、その意義を問い直す。
計算プログラム・サンプル動画 付
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【計算プログラム】
■低常造波問題
SemiSubCircle_q-method.f
SemiSubCircle_Phi-method.f
HydroFoil_q-method.f
WVSingulars.Subs.f
■周期的波浪中問題(一様流なし)
SemiSub-LewisForm_Phi-method.f
FullSub-LewisForm_Phi-method.f
WVSingulars.Subs.f
■一様流中の周期的造波問題
WaveMakerBoard.f
WVSingulars.Subs.f
【サンプル動画】
■周期的波浪中問題(一様流なし) (=フォルダー名)
Diff 鉛直平板波数0.5
Diff 鉛直平板波数1.0
Diff 全没円柱波形成分
Diff 全没円柱流跡線成分
Diff 半没円柱流跡線成分
Diff 半没非対称柱流跡線
Rad 全没円柱回転揺流跡線
Rad 全没円柱左右揺流跡線
Rad 全没円柱上下揺流跡線
Rad 全没円柱片側造波(右方) 合成流跡線
Rad 全没円柱片側造波(左方) 合成流跡線
Rad 半没非対称物体横揺流跡線
Rad 半没非対称物体左右揺流跡線
Rad 半没非対称物体上下揺流跡線
WAb 全没円柱消波装置合成流跡線
WAb 全没円柱消波装置流跡線
入射波流跡線正方向
入射波流跡線負方向
波渦流跡線
波吹き出し流跡線
■一様流中の周期的造波問題(=フォルダー名)
滑走平板縦揺
滑走平板上下揺
造波板_縦揺れ
造波板縦揺
造波板上下揺
【まえがき】
本書は書名の通り、水波に関連する問題の解法についてまとめたものである。水の波を本書では「水波」と称している.水波とは重力の作用によって水面に生じるいわゆる重力波のことを指す。
この水波のうち2次元状に生じている水波を「2次元水波」と呼んでいる。水面上の物体が移動すると水面に波動が生じて水波となる。物体が揺れ動いても水波が生じる。また水波中に物体が固定されていれば物体には力が作用するし、浮いていれば揺れ動く。
こうした物体の運動とそれによって生じる水波との関係、あるいは水波とそれによる物体に働く力や運動との関係などを調べる問題を本書では「水波問題」と称している。水波問題の解法という分野は一般には難しい分野である。そのため2次元状に運動する水波に限定している。
さらに問題を簡略化するために、水波の振幅が小さい場合(正しくは波長に比して)のみを扱う。この時、水面を規定する数学的条件は線形の方程式となり、こうした線形の条件を扱う理論は線形理論と呼ばれている。本書では2次元状の水波を線形理論で扱いその数値解法及び計算結果を示すことを目的としている。
ただし、水波問題全般を扱うのではなくそのうち定常な場合と2つの周期的な場合の3つの問題のみを取り上げる。そしてそれらの数値解を求めるための解法について述べるのであって、過渡的な水波などについては触れることはない。
ここまで読まれた読者はもうお気付きのことと思われるが、本書は水波の種類や性質についての解説書や専門書ではない。水波を扱っているのであるから水波の種類、性質については簡単に触れるが深く論ずることはない。そうした分野の勉強をしたいのであれば良書は他に沢山ある。
水波に関する問題に限らず、昨今では純粋な数値計算法が著しく発展してきており、大体どのように複雑な現象に関する問題でも比較的簡単に解ける時代となっている。それでも著者は本書を上梓した。その理由の2つばかりをあげておく。
まずはノスタルジーである。著者は本書の解法を利用したいくつかの論文を発表してきた。それらがまったく世に貢献していなかったとは言えないと信じたい。しかし、それらの論文で用いた解法の基礎となってきた知識について知ろうとしても、現在では外国の数書を除けばほとんど見当たらない。本書は、我々の世代より以前に行ってきたが、今は忘れられようとしている事柄を遺産として記録に残しておきたいという気持ちの表われと言ってもいいかもしれない。
次の理由は言い古された問題ではあるが、純粋な数値計算によって得られた解からは、定性的な性質や展望が得にくいということである。また、純数値的方法はその計算法に誤りがあった場合に、それを発見しづらいという欠点がある。それらを本書のような半解析的手法の結果と比較することは有益な場合が多い。比較のための1つの方法を提示しておきたいという気持ちが強い。
水波に関する現象のうち2次元的な現象は、人工的な場合を除くと自然界にはめったに見られない。しかし、3次元問題についての解析的な方法は、現在に至るも極めて難しい分野でもあり、それらの発展が望まれているのが現状である。3次元問題の解の性質の調査や解法の開発に、2次元問題の解の性質や解法が参考となる場合も多い。また、ある工学的分野では2次元の波動に関する結果が大いに役立っている場合もあるのである。以上のような理由から本書の目指す所もまったく無意味というわけではないと考えている。
本書が対象としている読者は、理工学系の大学の上級生か大学院生程度で、流体力学、複素関数論の基礎を習得していること、具体的に言うと、Milne-Thomson [1] の本を読める位の学力が望まれる。
本書を読むにあたって、その筋書きや論理の展開の仕方に疑問やら違和感を抱く読者の方がおられるかもしれない。それに対する釈明をしておきたい。
本文で、つじつまの合わないなどの部分や本質的な部分の誤りなどがあるとすれば、それは著者の能力不足のせいであり、ご指摘をいただければ有難い。それとは別の、論理的なつながりが弱いこと、飛躍があること、前後の文脈の連携が十分でないこと、また、章により論理の組み立てが異なっているなどがあるかもしれないが、それは著者の能力の欠陥の故であり、その点はご寛恕の上補って読んで頂ければ有難い。若いころあたためていたアイデアや定年後に得た知見を含めて著者なりにまとめた本書ではあるが、読者諸兄の思考や研究の一助ともなれば望外の喜びである。
2018年9月
鈴木勝雄
【目次】
第1章 序
第2章線形水波問題3
2.1 水の波と水波問題
2.2 複素ポテンシャルとその表示
2.3 線形自由表面条件
2.3.1 1. 定常造波問題における線形自由表面条件
2.3.2 2. 周期的波浪中問題(一様流なし)における線形自由表面条件
2.3.3 3. 一様流中の周期的造波問題における線形自由表面条件
第3章 波特異関数
3.1 いくつかの積分表示式
3.2 演算子法
3.3 波特異関数の導入
3.3.1 1. 定常造波問題における波特異関数
3.3.2 2. 周期的波浪中問題(一様流なし)における波特異関数
3.3.3 3. 一様流中の周期的造波問題における波特異関数
3.3.4 対数関数の折れ線状分岐線の場合分け
第4章 解析解
4.1 1. 定常造波問題における解析解
4.2 2. 周期的波浪中問題(一様流なし)における解析解
4.3 関連積分表
第5章 境界値問題の数値解法141
5.1 無限領域一様流中の物体周りの流れの解法
5.1.1 非揚力体周りの流れに関する境界積分方程式の導入
5.1.2 揚力体周りの流れに関する境界積分方程式の導入
5.1.3 境界積分方程式の数値解法
5.1.4 数値解の例
1) Φ-法
2) q-法
3) Joukowski 翼型
5.1.5 対数関数のGreen積分表示
5.2 I. 定常造波問題
5.2.1 没水体
1) 境界条件
2) 解の表示
3) 境界積分方程式と数値解法
4) 造波抵抗と運動量定理
5) 数値解の例
5.2.2 Neumann-Kelvin 問題(半没物体)
1) Neumann-Kelvin 問題とは
2) 境界条件
3) 正則解と弱特異解の積分表示式
4) 弱特異固有解の積分表示式
5) 解の一般表示式
6) 境界積分方程式と数値解法
7) 造波抵抗と運動量の保存則
8) 数値解の例-1(半没円柱)
9) 数値解の例-2(伴流模型と滑走解)
10) 数値解の例-3(半没鉛直平板)
5.2.3 多重極展開法
1) 多重極展開法
2) 波なしポテンシャルと等角写像
3) Ursell-田才法
4) 没水体に関する多重極展開法
5) Lewis Form 形状
5.2.4 滑走板理論
1) 滑走板理論と解の表示
2) 浸水長及び姿勢変化
3) 数値解の例-1(トリム固定の滑走平板)
4) 数値解の例-2(トリム自由の滑走平板)
5) 解析解との比較
5.3 2. 周期的波浪中問題(一様流なし)
5.3.1 diffraction 問題のΦ-法による解法
1) 境界条件と入射波
2) diffraction 問題
3) 解の表示と境界積分方程式
4) Kochin 関数,反射率と透過率,波浪強制力
5.3.2 radiation 問題のΦ-法による解法
1) 境界条件
2) 解の表示と境界積分方程式
3) Kochin 関数,付加質量係数と減衰力係数
4) Haskind の関係
5.3.3 数値解の例
5.3.4 他の解法によるdiffraction問題の解
5.3.5 多重極展開法
1) 波なしポテンシャルの導入
2) 半没物体
3) 全没物体
5.4 3. 一様流中の周期的造波問題
5.4.1 動揺滑走板問題
5.4.2 数値解の例
1) 動揺滑走板
2) 造波装置
3) 今後の課題
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