地域 × アニメ ーコンテンツツーリズムからの展開ー


978-4-425-93181-1
著者名:大石玄/近藤周吾/杉本圭吾/谷口重徳/西田隆政/ 西田谷洋/風呂本武典/横濱雄二 共著
ISBN:978-4-425-93181-1
発行年月日:2019/3/8
サイズ/頁数:A5判 288頁
在庫状況:品切れ
価格¥2,860円(税込)
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地方や特定の地域を題材にしたアニメが多く発表されるようになり、そのファンが現地を訪れ、物語を追体験する聖地巡礼やコンテンツツーリズムがブームとなっている。
こうしたことから現地を訪れるファンを取り込み観光地化する動きが全国で活発になっているが、一方で、こうしたファンや旅行者のニーズを必ずしも的確にとらえきれず一過性にものに終わってしまう、あるいは商業主義が全面に出過ぎてファンに見透かされてしまうといった例も多い。
そこで本書では迎え入れる側からの一方通行ではない、地域と旅行者、ファンのニーズをとらえ、どちらか一方からではない、両者が一体となって地域とアニメの関係性を作っていく方向性について、実際の事例なども取り上げながら解説していく。

【はしがき】 地域コンテンツ研究会では、その名のとおり、〈地域×コンテンツ〉についての研究を積み重ねてきました。とりわけ聖地巡礼と呼ばれる現象をめぐる私たちの討議は白熱し、夜を徹して行われることも珍しくありませんでした。
本書『地域×アニメ――コンテンツツーリズムからの展開』は、そのような私たちの研究成果を集めたものです。ごく一部を除き、書き下ろしの新稿ばかりですので、地域やコンテンツに関心のある向きには、ぜひともお買い求めいただきたく存じます。
本書のタイトルは『地域×アニメ』となっていますが、一般向けにわかりやすく「アニメ」と表示したに過ぎません。コンテンツ全般が対象なので、アニメだけでなく、文学・ライトノベル・映画・ゲーム・マンガ・絵画・演劇・歌謡など、さまざまなジャンルを幅広く取りあげようとしています。また、コンテンツ抜きでも、地域のためになることであれば、関心を寄せています。実際、本書でもそうなっているはずです。その逆も真なりで、コンテンツそのものの自律性にも配慮するよう心がけています。コンテンツはなにも地域を潤すだけが能というわけでもありません。
地域コンテンツ研究会は、北日本サブカルチャー研究会と西日本コンテンツ文化研究会が合わさってできた研究会です。前身の時代から数えると、10年ぐらい活動を続けてきました。年に2回の研究会がメインの活動ですが、それ以外にも個々で、あるいはそれぞれの地域で独自の活動を行っています。私たちの合い言葉は、「学際主義」と「内発的発展」の2つです。簡単にいえば、「いろいろな学問分野の見方や考え方を学び合いましょう」ということ、そして「地域が内側から元気にならないと意味がないよね」といった感じです。
ここで、これまで研究会や打ち合わせが開催された8校を、感謝の気持ちも込めつつ、北から順に列挙してみましょう。
北海道大学(札幌市)/釧路工業高等専門学校(釧路市)
/富山大学(富山市)/富山県立大学(射水市=旧小杉町)
/富山高等専門学校(射水市=旧新湊市)/甲南女子大学
(神戸市)/広島国際学院大学(広島市)/広島商船高等
専門学校(大崎上島町)
このラインナップからもわかるように、これまでは北海道・北陸・近畿・中国の4つの地域を拠点としてきました。これから先は未知数ですが、ご協力が得られれば他の地域での開催も考えていこうと話し合っています。
本書の執筆陣は、巻末の紹介をご覧いただければわかるように、大学や高専で活躍する研究者ばかりです。社会科学系と人文科学系がほどよくミックスしており、専門も多岐にわたっています。
本書は、全体が7つのチャプター(章)で構成されています。全体の流れは、序論〜総論〜総論〜各論〜展開〜実践〜発展というふうに進んでいきます。1 「地域コンテンツ学 事始め」が《序論》です。「同床異夢」ならぬ「異床同夢」というキーワードによって、この研究会および本書全体のコンセプトが粗描されます。《総論》には、地域中心のものと、コンテンツ中心のものの2種類を用意しました。2「 コンテンツツーリズムから地域コンテンツへ」では「、コンテンツと地域の出会い」や「内発的発展」という本書にとって欠かすことのできない2つの考え方について解説しています。他方、3 「コンテンツと地域の関わり」では、アニメとゲームを例にして地域が表象されている主な事例を収集した鳥瞰図です。アニメのものは、有名な舞台探訪アーカイブの主によるもので注目されます。
ゲームのものも珍しく、全貌とまでは行かないまでも見取り図として役に立つこと必至です。4 「コンテンツの視点から」は《各論》です。数あるコンテンツの中から『君の名は。』や『花咲くいろはHome Sweet Home』といった具体的な作品を取り上げ、メディアやイデオロギーとの関係を吟味します。5 「内発的発展をめぐって」《展開》では、コンテンツを取り巻く状況に着目し、内発的発展と外来型開発のせめぎ合いを明らかにします。6 「コンテンツツーリズムから地域コンテンツへ」《実践》では、兵庫県・富山県・広島県での実践例にフォーカスしています。7 「内発的発展とコンテンツツーリズム」《発展》では、一般論には回収しきれない今後の地域振興のあり方を俯瞰しています。
およそ一筋縄というわけにはいかない7つのチャプターに共通するのはおそらく、外側からの働きかけに依存したり引きずられたりするのではなく、地域ないしコンテンツの内発性、内部の世界を大切に慈しみ守ろうとする、ごく基本的な姿勢なのだろうと思います。このあたりをご理解いただくと、本章の全体像も少しは見通しやすくなるはずです。
もっとも本書は、状況をすっきりとわかりやすく整理することを目指した書物ではありません。むしろその逆で、かなりくせのある書物に仕上がりました。それは、地域やコンテンツの内部のために、従来の学問や制度、因習などの枠組みを根底から解体しようと悪戦苦闘しているからだとご承知おきください。
最後に、副題についても触れておきましょう。副題は「コンテンツツーリズムからの展開」としました。「展開」というところには、ひそかに「転回」という含みも持たせたつもりです。そのあたりも本書を通じて、くみとっていただけるのなら、ありがたく思います。
本書は地域コンテンツ研究会にとって最初の編著です。ご感想やご意見をお寄せいただけると、私たち―とりわけ若い大学院生―の励みになります。ぜひともよろしくお願いいたします。

2019年2月
地域コンテンツ研究会

【目次】 Chapter 1  地域コンテンツ学 事始め 《序論》
 近藤周吾 〈地域× アニメ〉を論じる前に
 「同床異夢」から「異床同夢」へ

Chapter 2  コンテンツツーリズムから地域コンテンツへ 《総論》
 Section 1
  谷口重徳 「コンテンツと地域との出会い」を再考するために
        コンテンツによる地域の活性化とは
 Section 2
  風呂本武典 内発的発展論におけるツーリズム

Chapter 3  コンテンツと地域の関わり 《総論》
 Section 1
  大石 玄 アニメにおける「地域表象」
       居心地の良い場所はどこに生まれるのか?

 Section 2
  杉本圭吾 ゲームにおける「地域表象」

Chapter 4  コンテンツの視点から 《各論》
 Section 1
  横濱雄二 メディア・イベントとしての『君の名は』と『君の名は。』

 Section 2
  西田谷 洋 輝くことの物語と過剰
       劇場版『花咲くいろは HOME SWEET HOME』

Chapter 5  内発的発展をめぐって 《展開》
 Section 1
  近藤周吾 地方のアニメスタジオに可能性があるは本当か?
       P.A.WORKSと城端、あるいは、社会科学と人文科学のインターフェイス

 Section 2
  風呂本武典 外来型開発によるコンテンツツーリズムの課題

 Section 3
  谷口重徳 アニメーションシティへの夢
       広島アニメーションシティ

Chapter 6  コンテンツツーリズムから地域コンテンツへ 《実践》
 Section 1
  西田隆政 兵庫県―尼崎市と『落第忍者乱太郎』
       地名の「聖地」の地に足のついた取り組みとは

 Section 2
 近藤周吾 富山県?富山市にある高志の国文学館
      文学とサブカルチャーの?両輪駆動?

 Section 3
 谷口重徳 広島県?三次市の蔵プロジェクト

Chapter 7  内発的発展とコンテンツツーリズム 《発展》
 Section 1
  風呂本武典 コンテンツツーリズムの課題と克服

 Section 2
  風呂本武典 コンテンツツーリズムを超えていく


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