著者名: | 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 編著 |
ISBN: | 978-4-425-55451-5 |
発行年月日: | 2020/6/28 |
サイズ/頁数: | A5判 204頁 |
在庫状況: | 品切れ |
価格 | ¥2,420円(税込) |
地球温暖化の影響により、日本の農業にどのような影響があるのか? 全国の農業の現場から得られた実験を元に、その研究や技術がどのように利用されているかを紹介した内容。
【はじめに】
「猛暑の夏」、「ゲリラ豪雨」、「大型台風」と、地球温暖化に起因するとされる現象が異常ではなくなりつつあります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書によると、地球温暖化には疑う余地はなく、その要因は経済成長や人口増加による人為的な温室効果ガス排出量の増加である可能性が極めて高いとされています。日本においても温暖化は着実に進行しており、私たちの社会生活・経済や自然環境に大きな影響を与えつつあります。
農業も例外ではありません。農林水産省が毎年公表している「地球温暖化影響調査レポート」では、日本全国での水稲、果樹、野菜、畜産等における温暖化による品質・収量低下の現状とともに、各地で取り組まれている対策が報告されています。また、内閣府が2016年に行った「地球温暖化対策に関する世論調査」では、地球温暖化がもたらす影響への関心として、「洪水、高潮・高波などの自然災害の増加」(63%)に続いて「農作物の品質や収量の低下」(58%)が挙げられており、農業への影響に社会の高い関心が寄せられています。
温暖化の進行を食い止めるには、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの人為的排出の削減を進めること(温暖化進行の緩和)が重要ですが、それと同時に、すでに顕在化しつつある負の影響への対策を早急に進めなければなりません(温暖化への適応)。そのため農業分野では、高温条件下においても品質・収量を安定化させるための栽培技術や高温に耐性のある作物品種の開発などが進められています。
また、将来起こりうる気温や二酸化炭素濃度上昇、降雨量や分布の変化などが農作物や農業水利用に与える影響を予測し、それに向けた対策も提案していく必要があります(温暖化の影響予測)。
このような「地球温暖化の農業への影響が顕在化」し、「社会の高い関心がある」一方で、温暖化の引き起こす問題解決に向けて、農業分野においてどのような研究が行われているのか、そしてそれらの開発技術がどのように利用されているかを紹介する書籍は、これまでほとんど出版されていませんでした。そこで本書では、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究者が中心に取り組んできた気候変動対応研究の中から、とくに影響評価と適応策について最新の状況を紹介することとしました。
これらの研究・技術開発には、北海道から九州・沖縄に所在する農研機構の多くの研究者が携わっており、水田や畑における地道な作物栽培実験から、数理モデルやコンピュータシミュレーションまで、さまざまな手法を駆使して取り組んでいます。各章は実際の研究担当者がわかりやすく解説する構成としており、紙面の都合もあり概要にとどめざるを得なかった部分も多いですが、可能な範囲で参考文献やWebサイトの情報も盛り込みました。農業に携わる皆さんはもちろん、各地の農業普及指導や温暖化適応対策の担当者、学生の皆さん、温暖化と農業の問題に関心を持つ市民の皆さんなど、幅広い方々の参考になれば幸いです。
2020年4月
渡邊 朋也
八木 一行
【目次】
第1章 地球温暖化と気候変動
1.1 地球温暖化の現状と将来予測
1.2 気候変動と世界の食料生産
第2章 日本農業に影響を及ぼす気候の変化
2.1 日本の気温と降水量の長期変化
2.2 農業に影響を及ぼす夏季の高温
2.3 気温・降水量以外の気象要素の長期変化
2.4 農耕地を代表するモニタリング地点
コラム:日本の各地域における将来気候の予測情報(地域気候シナリオ)
第3章 水稲
3.1 温暖化影響の現状
3.2 将来予測
3.3 適応技術
コラム:メッシュ気象データと気象災害早期警戒・栽培管理支援システム
第4章 畑作物
4.1 コムギとダイズへの温暖化影響
4.2 北海道畑作への影響とその対策(コムギとバレイショ)
4.3 北海道・十勝地方における野良イモの問題とその適応策
第5章 野菜
5.1 全国的な野菜需給の変化
5.2 露地野菜への影響
5.3 施設野菜への影響
第6章 果樹・茶
6.1 すでに起こっている変化
6.2 これから起こりうる変化
6.3 果樹における温暖化適応技術
第7章 家畜・飼料作物
7.1 夏の暑さが家畜・家禽に及ぼす影響
7.2 温暖化が家畜・飼料作物生産に及ぼす影響予測
7.3 温暖化適応技術としての暑熱対策技術
第8章 病害虫・雑草
8.1 害虫
8.2 病害
8.3 雑草
第9章 農業生産基盤
9.1 現状を知るための現地観測技術
9.2 影響予測技術
9.3 水利施設の運用による適応技術
コラム:豪雨によるため池の被災リスクと減災対策効果の評価ツール
第10章 地球温暖化と気候変動に適応するための取組み
10.1 気候変動への国際的対応
10.2 国と地方自治体の施策展開
10.3 農業分野における適応施策
10.4 農研機構における研究開発
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