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2011年1月5日  

海上保安大学校女子学生のみなさん

海上保安大学校女子学生のみなさん
我が国の領土面積(約38万)は世界で61位にすぎませんが、領海及び排他的経済水域の面積は、領土面積の約12倍(約447万)で、世界第6位、海岸線の長さも世界第6位です。我が国はこのように広大な海で四面を囲まれた海洋国家です。そのため、 海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張の場となるなど、様々な事案が発生しています。海上保安庁は、海上の安全及び治安の確保を任務とし、関係国との連携・協力関係の強化等の活動に日夜従事しています。 海上保安大学校は、海上保安庁の幹部職員を養成するための機関であり、全寮制を基盤とした独自の教育環境の下、広範囲にわたる海上保安業務を全うできる人材育成のための教育訓練を実施しています。
このような教育訓練を受け、海上保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生5名にお話を聞いてきました。

海上保安大学を選んだ理由は何ですか?

深川:浪人している時に予備校で海上保安大学校の募集があり、受験してからパンフレット等を見て興味が湧いた。
岡本:海上保安官になりたいというより、海上保安大学校へ入りたかった。進路に迷った時期にいろいろなことが勉強したいと思い、保大では法律系も工学系の勉強もできるので知識をつけたいと思って選びました。
宮本:海上保安官を目指して入ったのではなく、海に関わる仕事がしたいと思い、海上保安大学校の存在を知り、一般の大学とは違って規律のある学校なので、校風が自分に合ってると思って入りました。
天野:制服が着たかった。(笑)
本庁で働きたいと思っていたので、保安学校より保安大学校を選びました。
大学校では、幅広い知識が学べるので、そこが一番大きな理由となりました。
仲宗根:いろいろな領土問題とか起きていますが、実際にその現場を見てみたいと思い海保大であれば海上保安官になれるので、いろいろ勉強できて良いのではないかと思いました。
小川:今のお話を聞いていると海上保安官を目指しているというより、海上保安大学校に入りたいと思っていたんですね。
深川:いずれ海上保安官になるんだなと思いつつ、おもしろそうだな、いろいろなことが学べるなと思いました。

海上保安大学校の魅力は何ですか?

深川:三学年では国際化している海上保安業務に対応できるよう、専門教育も受けています。たとえば、国際関係ですとか、法律・専門科目・航海・機関と選択肢が広がるカリキュラムになっています。
岡本:海上保安庁の初級幹部になるためのいろいろなことが勉強できるのと、一般大学とは違った経験が積めますし、寮生活を通して人間関係が築けて、普通の大学では学べないことが体験できます。やりたいなと思ったことは大体できると思います。進路は海上保安官に絞られますがたくさんのことが学べます。
宮本:寮生活が大きな特徴なのですが、いい意味でも悪い意味でも親密になってきます。そこでの上下関係、横の関係が良いところだと思っています。必ず人に必要とされる立場につれて行かれるので、責任感がつきます。自分がいなくてもいいという発想にはなりませんので、必ず必要とされる職場に行けます。
天野:魅力は3人が言ったことで、私はそこしかないです。
仲宗根:人間関係が濃密だと思います。嫌なところも良いところも全部見えてきますので、一般大学だと深く関わることはこんなにはないんだろうなと思います。

入学して良かったことを教えてください。

深川:規律を守っていかなければいけないので、責任感が自然に身につく環境にいられることです。
岡本:魅力と繋がるのですが、いろいろな刺激を受けられるので良かったと思います。
宮本:休暇は完全に時間が確保されているので視野を広げるために、休暇は旅行に行けるのが嬉しいです。
天野:様々な勉強ができることが良かったと思います。また、ヨット部で活動することが海の知識を学べるので良かったと思っています。
仲宗根:勉強の面でいい教官がいますし、乗船実習で日本を自分たちの手で動かして回るのは、普通できることではないので選択の幅が広がってよかったと思ってます。

座学で練習船をどう感じていましたか?

宮本:座学では、練習船での生活や訓練がイメージできませんでした。
岡本:座学では通信機器が実際にはどう繋がっていくのか全く想像できなかったので、
乗船して、教官から話を聞きながら、この話ってあの授業だったのかもしれないいと思ったりしてました。
仲宗根:練習船の機関制御室の中に「百聞は一見にしかず」とあり、それを見て確かにと思いました。

乗船前の不安または、期待はありましたか?

深川:不安はたくさんありました。船酔い、メンタル面で耐えられるか、ちゃんとした仕事ができるか不安でした。
岡本:乗船実習が初めてなので分からないことだらけで、しかも今回の乗船では、直長兼
班長に指名されたのですが、何をやればいいのかとプレッシャーにもなりました。
乗船実習を乗り切るために、北海道へ行ったら鮭とイクラの親子丼を食べるのと沖縄では、ダイビングをするという楽しみを見つけて行こうと思っていました。
宮本:上級生に話を聞いても、乗ればなんとかなると言われてました。夏休み明けから乗船実習だったのですが、信じられない位乗りたくなかったです。自分が積み
上げてきたものが全く役に立たない世界なんだろうなと思ったので不安というか怖かったです。期待も覚えていないです。
天野:荷物を船に搬入するのですが、いつ搬入すればいいのか、何を持って行けばいいのかがわからずで、最初に実施要項のプリントが配られるのですが、そこに書いてあることすら理解できず不安でした。
船が陸から離れて行くときは、ワクワクしました。
仲宗根:皆が「やだな~」と言っているのを聞きながら、嫌なんだと思ってたくらいで、実際、乗船が始まってみて、時間の余裕もなく不安に思っている同期の中にいることが嫌でした。期待というか、実家が沖縄なので沖縄に寄港できるのが楽しみでした。

乗船してみてどうでしたか?

深川:座学の勉強が繋がる面がたくさんあるので、授業はきちんと聞いていなければいけないなと思いました。
岡本:練習船も現場のひとつなので現場を感じました。実際、作業に入ってどういったことをすればいいのかは覚えたのですが、どうしてそうなのかということや通信機器の中はどうなっているのかは気になるので、これから勉強していきたいと思いました。
宮本:同期は、乗船が自分と同じで初めてなのだから、私がわからないのと同じ位わからないし、できないこともできることも同じ位なんだな、というのがわかって安心したので船に乗るのが楽になりました。
天野:上級生から練習船の教官は「怖い」と聞かされていましたが、実際に乗船して怒られる時、怒鳴られたりするのですが聞いているともっともだなと、それは怖いとは言わないんだなと自分の中で思い、その教官について行こうと思いました。また船橋に立った時に、座学で勉強しましたが現場でしか味わえないことが学べたということが一番良かったことです。
仲宗根:座学で学んだことが現場でうまくできた時は、もっと勉強したい、もっと勉強することがあるなと思いましたが、卒業後1年、3年、5年経ったときに教官のようにできるのかなという不安ができました。

乗船体験談を教えてください

天野:1回の航海当直(通称「ワッチ」という)で5,6回吐いたことです。
岡本:私もワッチ中5回位吐きました。
深川:トイレに行く余裕もなく、図書室で吐きました。
小川:ワッチ中はどうやって教官に知らせるの?   
深川:ワッチ中は、教官に手をあげて合図するんです。
宮本:船酔いはしない方なんですが、皆が酔っているので自分も酔わなきゃ悪いかもでした。

乗船勤務について教えてください

深川:実習の時は、教えて下さいという立場ですが現場に行ったら主任士(初級幹部)という立場で行くので、最初は学んで、教える立場になって自分の役割を果たせるようになりたいと思います。
岡本:船内での通信業務にも興味はありますが、航空分野での通信に興味がありますので、いずれはこの方面での希望を出したいです。また、捜査関係にも係わって行きたいと思っています。

今を振り返って

宮本:入学したころと比べると役割が変わってきたなと感じます。各学年の役割が避けようもなくやってくるので、役職に就いた後に自分が合わせるしかないので、学校という組織に育ててもらってるなと感じます。同じことをするのでも行動の理由が変わってきています。それは組織のおかげかなと思います。

海上保安大学を目指す女性へ

深川:飛び込む勇気と自分はできるんだという自信を持って入ってきてくれたらその自信に基づき実務もついてきます。

今後の抱負を教えてください

仲宗根:海上保安官になるに当たって「こじま」で面倒を見てくれた教官方のように何でもできる人になりたいと思いました。将来家庭を持っても家庭と仕事を両立できたらと思っています。
天野:船の中の一般常識は知っておくべきだし、知識を増やして現場に出られたらと思うので、現場での事案等、自分で経験できないものは人から聞いて自分のも
のにしていこうかなと思っています。
宮本:必要とされる人間になりたいので、日々の勉学に励むということを心に決めています。
岡本:いろいろなことをやりたいと思うので、何にでもチャレンジしていきたいです。
深川:寮生活は今後経験ができないので、寮にいる同期や下級生とたくさん触れ合って現場に出た時は乗組員の方々たくさんの方々やと交流を深められるような素養
を身につけたいと思います。

【編集後記】

海上保安大学校は、規律のある学校なので、その規律を守っていくことにより、責任感が自然に身につくようです。寮生活を通して、上下・横の人間関係が築け、各学年での役割も明確になっていて嫌でもやるしかない。また、学年が上がると同じ事をするので行動理由が変わってくるのは、校風なのでしょう。そのように行動していくのは、学校に育ててもらっているからだと話してくれました。
彼女たちが海上保安大学校を選んだのは、海上保安官になるというより、海上保安大学校へ行くと「いろいろ勉強ができる」「幅広い知識が学べる」「知識をつけたい」などで、とにかく学びたい学ぼうとする気持ちが強いことからです。志を持って選んだ学校なので、彼女たちの吸収力はとても大きいものだと思います。敷地面積124.899㎡、三方を穏やかな瀬戸内海に囲まれ、白いカモメが波間に漂う風光明媚なキャンパスで、厳しい中にも楽しみながら学生生活を送っている彼女たちを見ていると、○十年若かったら私も入学したいと思ってしまいました。
今回インタビューをさせていただいた女子学生を含め、海上保安大学校の学生は、それぞれの夢・目標に向かって学んでいるので、立派な海上保安官になることを信じています。一人でも多くの若者が「海」への夢を抱いて海上保安大学校の学生に続いていただけたらと思います。

今回お話を聞かせてくれた、深川さん・岡本さん・宮本さん・天野さん・仲宗根さんありがとうございました。

聞き手 
株式会社成山堂書店
代表取締役社長 小川典子
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