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2011年12月2日  

第2回海上保安大学校女子学生インタビュー

第2回海上保安大学校女子学生インタビュー
我が国は、海で四面を囲まれた海洋国家であるため、貿易や漁業により恵みを得る一方、海難や密航・密輸といった海上犯罪、領土や海洋資源の帰属について国家間の主権主張となるなど、さまざまな事案が発生しています。これら、海上の安全確保を任務としているのが海上保安庁です。海上保安庁は、国土交通省の外郭団体であり、一般の方々にはあまり知られていないのが現状です。
現在では全国に約12,500人の職員がいます。国民が安心して海を利用できるよう日夜従事しているのです。その海上保安庁の幹部職員を養成するための機関が「海上保安大学校」です。全寮制を基盤とした独自の教育環境の下、広範囲にわたる海上保安業務を全うできる人材育成のための教育訓練を実施しています。まだまだ男性が多い中、女性保安官を目指す海上保安大学校3年生の女子学生7名にお話しを聞いてきました。

海上保安大学を選んだ理由は何ですか?

荒堀:
祖父が海上保安官でした。私が生まれる前の年に退職していたので祖父に連れられ、巡視船や第八管区本部へよく遊びに行ってました。自然に保安官になるものだという風に育ってきたので子どもの頃から海上保安大学校を目指していました。2歳の時から水泳をやっていて、水泳を続けていれば海上保安官になれるかなと思って続けていました。

小川:なぜ、水泳を続けていると海上保安官になれると思ったの?
荒堀:泳げたら海上保安官になれるかな・・・と思って(笑)

藤井:
進路がなかなか決められず、そんな時に赤本で海上保安大学校を見つけ分野が広いと思いました。船に乗れば航海・機関・通信に分かれ、それぞれ専門の分野での知識をもとに船を動かし、事案があればそれに対応する法律の知識をもって事案に対処するということが広い分野の仕事だなと思いました。やりたいことがあって進路が決まらなかったけど、海上保安庁という組織 があるのを知って多くの分野で広く浅くいろいろな仕事ができることに魅力を感じました。          

森口:
小さい頃から公安系の仕事に憧れていて、そういう仕事に就きたいと思っていました。最初は、海上保安庁の存在を知らなかったのですが、警察・自衛隊・消防などを調べていく中で知って海が好きだったので受けてみようかなと思いました。

北島:
高校時代に模擬試験を受けた時、海上保安大学校の存在を知り、海上保安庁に興味を持ちました。そんな時、横浜へ遊びに行く機会があり、そこで巡視船を見たとき甲板で女性が働いている姿を見て私もなりたいと思いました。

吉原:
普通の人と同じ大学へ行ってもつまらないと思っていろいろ探していたところ海上保安大学校を見つけました。その仕事に携わっている人でないと分からないような仕事がしたいと思っていました。自分の希望でもあったし、両親賛成してくれたし、長い目でみたらいい職場なんじゃないかなと思って受けました。

小粥:
もともと麻薬取締官になりたかったんです(笑)。最初は、空港で働きたかったんですが、文系からしかなれない職業ばかりで、唯一理系でなれる職業が麻薬取締官だったので目指していました。一般大学から行くより海上保安大学校に入った方が早く近い仕事に就けるのかなと思い受けました。

宇佐美:
ある時、海で事故に遭っている方がいたんですが、その事故を見たことがきっかけで海を守る仕事に興味を持ち、海を守る仕事を探していたところ海上保安大学校を見つけました。受験するに当たって望みが薄くてもチャレンジしてみようと思い受けました。

海上保安大学校の魅力は?

荒堀:同じ目標を持っている集団なので、いつも一緒にいるのが楽しい。

藤井:
人と人の関わりが濃く、自分が何かやりたいと思って自分から積極的に提案していけば何かしら実現できそうだし、教官方も熱心に教えてくれます。

森口:
今までは話さなくていい人とは同期でも上級生でも下級生でも話さなかったけど、作業・訓練の中で話ばいけないということがあり、でも話してみると面白い人だなっていうこともありますし、話さないまま卒業していってしまいそうな上級生の方にも話しかけていただいたりしたので、今までは下級生にしなかったことを自分がするようになり、不思議な発見です。

北島:
全員が同じ環境・立場で、かつ、同じことができることです。訓練も勉強も男子と一緒ですので、全員が平等でやりがいがあることが魅力だと思います。

吉原:
卒業したら海上保安官になるのですが、海上保安官は、船に乗るだけではなく法律改正を行ったり、他省庁に出向して様々な人達と関わることができたりと仕事に幅があり、いろいろな経験ができるということを知れたこと、また、授業で習わなければ興味も持たなかったし、知ることもなかったことがたくさん出てきて、新しいことを発見してそちらに興味を持って、やりたいことが増えていくことはいいことだと思いました。

小粥: 尊敬できる上級生が多くいること。

入学してよかったなと思うことは?

荒堀:全部です。規律が厳しい中で自分を律することができました。

現在苦労しているところは?

北島:
専門分野の勉強が厳しい。乗船していて難しいなと思ったのがその状況で一番いい方法を即、判断しなければいけないことです。その判断が間違ったら人の命に関わってくるので責任が重いなと思いました。でも、だからこそやりがいがあります。

吉原:
勉強です。興味があることは楽しいのですが、興味がなくても基準点以上を取っていかないと進級も卒業もできないのでそれをクリアするのが大変です。

小粥:
最初から海に興味があったわけではないので、海が好きで積極的に知識を得ていた同期との差が出てしまい、追いつくのに苦労しています。

座学で練習船をどう感じていましたか?

宇佐美 全く想像ができていなかった。

藤井:
通信科は、授業では通信機器について学んでいて、乗船中は仕組みだけ分かっていて使うことをメインに実習を行っていたので座学とリンクしなかった。

森口:
あとから考えると授業で教官から聞いたことが「あ~これなのか」と思えるんですが、乗船している時はすべてが新しいことにしか見えなかった。

吉原:
1,2年で船に関する基本理論を学んできたのですが、現場で本当に使われるのかと少し疑問に思っていました。でも、現場では皆さん基本理論が頭に入っているので考えることなく説明をしてくるのですが、私はその情報処理に全くついていけなかったので、座学の知識はきちんと学んでおかなければいけないなと思いました。

乗船前の不安・期待

森口: 不安しかなかったです。

荒堀: 乗船する前は早く乗りたくて期待してました。

乗船体験談

荒堀:台風に遭遇しました。                     

藤井:実習にならなかったですよ。

小川:船酔いはしなかった?
荒堀・藤井・宇佐美・北島・吉原・小粥: 酔い止め飲みました。

森口:
私、酔わなかったんです。みんな船酔いで食事もできない状態だったんですけど、美味しかったので一人で食べていました(笑)

吉原:航海当直(ワッチ)中も船酔い続出の時は、手動操舵が自動操舵に変わることもありました。

荒堀:
1回のワッチ(3時間)でビニール袋を一人一袋は持っていました。トイレに行くとそのまま引きこもってしまうので、少しでも長く船務(船の作業)ができるようぎりぎりまで我慢です。

藤井:通信科は、密室なのでトイレへ行かしてもらいました(笑)

乗船中の失敗は?

北島:漂流物などが浮いているのを直前に気が付いてギリギリで避けた。

森口:
漂流物などを見つけたらすぐに報告してみんなで次の判断をするのですが、その時あきらかに鳥だと分かっていながらなぜか言いだせなくて沈黙が流れ「あれ鳥だよね・・・」「鳥だね・・・」で終わってしまった(笑)

乗船勤務についてどう思いますか?

藤井:船務や日々の訓練については大体把握できていますが、実際の業務はまだ想像がつかないです。

海上保安大学校を目指す方ヘ

荒堀:目標を持ってしっかり勉強するべきだと思います。

森口:
覚悟は必要です(笑)でも、入学したら人間関係も濃くなりますし、辛いこともありますけどそれは同期が一緒なので乗り越えられます。

吉原:
特殊な学校なのでホームページを見たり直接問い合わせるなどして、しっかり調べた方がいいと思います。

藤井:
オープンキャンパスに行くといいですよ。私が行った時は、案内してくれた4年生がとても親切で母も 「雰囲気がとってもいいね。行ってもいいんじゃないの」と言ってくれました。

今後の抱負

宇佐美:乗船実習では至らないところが多々あったので、もっと多く学び現場に出たいと思います。

森口:
何事にも自分から積極的に行動を起こさないと、教えてもらえるものも教えてもらえなかったり、学べるところも学べなかったりするので、自分から積極的に学んでいきたいと思っています。また、男性にしかできない仕事が多いと思いますが、その中でも女性にしかできない仕事があると思うので、その時に頼ってもらえるような人間になりたいです。

藤井:
女性であることに誇りをもって海上保安官の仕事をしていきたいと思っています。組織的に職員数が少ない中で、女性が職務を遂行していくことは大変だと思いますが、将来、家庭を持っても仕事と両立させていきたいです。  

小粥:
充実した学生生活を送りたいと思っています。将来のことを考えたらきりがないので今、学べることは学んで行事等、楽しめることは楽しんでいきたいなと思っています。

吉原:
何か名を残せるようなことを成し遂げたいです。私、身体も小さいし、勉強に自信があるわけでもありませんので、これだけは凄いなと思われるものを身につけたいです。

北島:
女性ならではの視点で、女性にしかできないことをやっていきたいと思います。それでいて誰からも頼られる海上保安官になりたいと思います。

【編集後記】

 今回で3回目のインタビューですが、毎年、学生のカラーが違うのでインタビューするのがとても楽しみです。今年は、平成生まれの学生もいて「もう、そんな年代なのね」と歳を感じてしまいました(涙)
海上保安大学校は、広島県呉市にあります。一般大学と多くの共通点を持ちながらも全寮制を基盤とした環境の下、海上保安官の幹部として一般教養及び海上保安業務に必要な学術・技能を学びます。規律が厳しい学校なので、その規律を守っていくことにより、責任感が自然に身につくようです。寮生活を通して、上下・横の人間関係が築け、今までは話す必要がなければ話さないと思っていた感覚もこの学校にはなく、話すことによって違う自分が発見できるし、辛いことがあっても同期が一緒なので乗り越えられるほど人間関係が濃さは羨ましいものがあります。
 教育方針の中に『率先して任務の遂行にあたる旺盛な責任感を養う』とあります。何事も自分から行動を起こさないと教えてもらえないし、学べない。また、積極的に提案していけば実現できると学生は言っていますが、これも教育方針がそのようにさせるのでしょう。志を持って選んだ学校なので、学ぼうとする気持ちが強く、吸収力も大きいものだと思います。「卒業したら女性であることに誇りを持って海上保安官の業務に就きたい」という言葉に頼もしさを感じます。敷地面積124,899㎡、三方を穏やかな瀬戸内海に囲まれ、白いカモメが波間に漂う風光明媚なキャンパスで、厳しい中にも楽しみながら学生生活を送っている彼女たちは明るく元気に話してくれ、とっても楽しいインタビューでした。
 今回、インタビューさせていただいた女子学生を含め、海上保安大学校の学生は、それぞれの夢・目標に向かって学んでいるので立派な海上保安官になることを信じています。一人でも多くの若者が「海」への夢を抱いて海上保安大学校の学生に続いていくことを願っています。今回、お話を聞かせてくれた荒堀さん・藤井さん・森口さん・宇佐美さん・北島さん・吉原さん・小粥さんありがとうございました。

聞き手
株式会社成山堂書店
代表取締役社長 小川典子
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